[ITmedia ビジネスオンライン] コロナ禍で増えている「オフィスの引越し」、その段取りとチェックリスト

4月 1, 2021
Category: お知らせ


 テレワークなどにより社員の出勤が減り、オフィスの引越しが増えています。オフィスの引越しは一大プロジェクトであり、入念な準備と効率的なオペレーションを必要とします。スムーズにオフィスの引越しを成功させる段取りとチェックリストを紹介します。

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 本記事は、2021年4月号に掲載された「コロナ禍で増えている『オフィスの引越し』 その段取りとチェックリスト」を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集し、転載したものです。

オフィス移転の効果を最大化させるために

【1】オフィス移転を経営課題の解決手段と捉える

 オフィス移転を進めるにあたっては、コンセプトを固めることが重要です。

 というのも、オフィスの引越しは単に会社が移動するのみならず、業務の効率化、経営ビジョンの浸透、人材採用・定着、企業ブランドの向上など、経営に与えるインパクトの大きいプロジェクトになり得るからです。

 加えて昨今では、テレワークの普及・定着など働き方の変化も大きいため、中長期的な視野に立って計画を立てることが肝要です。

 従って、オフィス移転は経営課題の解決策の一つと位置付け、経営層自らがコミットすることが重要です。

 そこで、オフィスの移転を検討し始めたら、会社規模に応じて、移転について担当するメンバーを決める、もしくは移転プロジェクトチームを立ち上げるとよいでしょう。

 該当するメンバーが中心となって、経営層の思いや経営課題、従業員の意見など、社内の総意を取りまとめつつ、移転時の各種手配や社内外へのアナウンスの采配なども行っていきます。

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写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

【2】現状のオフィスでの課題や望ましくない要因を洗い出す

 働き方をどのように変えたいか、移転先のオフィスでどのように働きたいかを洗い出します。

 プロジェクトメンバーが中心となり、必要に応じて経営者や従業員へのヒアリング・アンケートなどを実施し、どのようなオフィスが理想となるか、どのような課題を解決したいかというビジョンを明確にしてから、移転に向けてプロジェクトを進めていきます。

 スケジューリングやチェック事項など、オフィスの移転は時間も手間も必要となりますが、目指すオフィスが形になった際には、働き方自体が変わり、経営課題の解決にまでつながります。

【3】オフィスデザインは業者選定がカギ

 オフィスのデザイン・レイアウトは、見た目や機能性はもとより、企業ブランディングや社員の満足度・離職率にも影響を及ぼします。また、採用のアピール要素にもなり得ます。

 前述したオフィス移転の方針・コンセプトを具現化するためには、オフィス内装を担う設計会社の選定がカギとなります。

 言われた通りのデザインしか提示しない設計会社か、要望をくみ取りプラスアルファの提案を盛り込んでくれる設計会社か。予算と方針にもよりますが、慎重に吟味したいところです。

 依頼先選定にあたっては、コンセプト設計からデザイン、移転手続きまでをワンストップで対応してくれる会社もありますので、選択肢に入れるとよいでしょう。

 また、依頼先選びをサポートしてくれるサービスも存在します。依頼先選定に知見がない場合は、こうしたマッチングサービスを利用するのも有効です。

【4】家具や什器・OA機器やICT、セキュリティなどを検討

 さらにデザインを進めるうえでの注意点としては、オフィス家具や什器(じゅうき)・OA機器や、インターネット環境などのICTやセキュリティ対策までを同時に検討することです。

 設計・デザインに優れた会社が、什器やICTにまで詳しいとは限りません。しかし、電気配線や入退出管理、Wi-Fi環境など、オフィスのレイアウトには、見えないところでさまざまな要素が関わってくるものです。

 これらも考慮しながら、オフィスの設計を進めていけるとスムーズですし、結果としてコストの削減にもつながります。

 設計・デザインを進める際には、こうした要素も同時に検討する、あるいは両方に対応できる依頼先を見つけることが大切です。オフィス家具や什器・OA機器やICTは後からでもよいだろうと思わず、プランニングの初期段階から検討するようにしましょう。

大まかなスケジュールを押さえよう

 以上のことと並行しながら、大まかなスケジュールを確認しましょう。



 移転の1年前くらいから動き出せると理想的ですが、それが難しい場合であっても最低6カ月〜9カ月ほど前には準備を始めたいものです。ここでは、最短の6カ月を例として説明します。

【1】6カ月前までに行っておくべきこと

  • (1)移転方針を決める

 前述した通り、オフィスの移転にあたって最も重要なのは、最初に移転の目的や期待する効果をしっかりと把握したうえで方針・コンセプトをつくることです。

 社内にプロジェクトチームを結成して、現状の問題点と、移転後の課題・目的を洗い出します。

 次はオフィスの移転スケジュール決めです。タスクを洗い出すと同時に、依頼する業者の検討を進めましょう。オフィス移転に関わる業者は、不動産会社や内装業者、OA機器業者、引越し業者など多岐にわたります。

  • (2)現状の確認と手続き

 現在のオフィスに関する確認や手続きを進めます。

 契約書の解約予告時期をふまえてオフィスの解約通知をしたり、原状回復に関する条件や費用などを確認します。

  • (3)移転先に求める条件の整理

 移転先となるオフィスのロケーションや物件の選定を行います。昨今のリモートワークの浸透などにより、オフィス物件に求める条件にも変化が生まれています。方針・コンセプトと照らし合わせて、要望を整理しましょう。

 方針や希望条件が固まったら、不動産会社と交渉していきます。

【2】4〜5カ月前までに行っておくべきこと

  • (1)オフィスデザイン・レイアウトを考える

 業務効率などの機能的側面と、コーポレートイメージなどのブランディング側面の両面からオフィスデザインを検討します。

 このタイミングでオフィス家具や什器・OA機器、ICTやセキュリティ対策なども総合的に検討すると、より満足度の高いオフィスを実現できます。

  • (2)工事の手配・契約

 レイアウトが固まり、見積もり内容に問題がなければ、最終的な工事費用を算出し、いよいよ工事を進めていきます。

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写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

【3】2カ月前までに行っておくべきこと

  • (1)移転に向けた手続きやあいさつ

 取引先への連絡・あいさつの準備を進めます。

 得意先以外にも、影響のある取引先は意外と多くあります。後述するチェックリストをもとに、漏れのないよう手配します。

 社内の書類や名刺、封筒などの備品、Webサイトなどの住所変更も忘れないよう行います。

  • (2)社内への告知・説明

 社員に向けた告知も進めなければいけません。移転に向けた準備タスクの取りまとめや、当日のタイムスケジュール・作業分担リストなどを作成します。

 移転をスムーズに進め、方針・コンセプトを浸透させるために、説明会を開くとよいでしょう。

【4】移転当日〜移転後の手続き

  • (1)移転当日

 事前に準備した当日のスケジュール・分担リストをもとに作業を進めます。

  • (2)移転後の届け出

 移転後、各関係省庁や公的機関へ書類を提出します。

思わぬトラブルを防ぐためのチェックポイント

 次に、移転時のトラブルを事前に防ぐポイントを解説します。



【1】解約予告時期を確認し解約通知をする

 オフィスを退去する際、オーナーやビル管理会社への解約通知は、退去6カ月前までを提出期限としているケースが多いです。

 解約を検討し始めた段階で、「預託金」の返還時期もあわせて確認しておきましょう。預託金とは、オフィスの借主が貸主に対して、賃料等の債務に対する担保として、あらかじめ預託する保証金や敷金、委託金などの総称です。

 また、契約書の「解約条項」によっては、契約期間内に解約すると違約金が発生する特約がある場合もあるので注意します。

 移転予算にも大きく関わる部分なので、事前に現在の契約内容をしっかり把握しておくことをおすすめします。

【2】オフィス原状回復の条件と費用を確認する

 賃貸オフィスの場合、退去時には原則として内装を入居時の状態に戻さなくてはなりません。

 また、物件によっては、原状回復工事について貸主の指定業者に依頼しなくてはならないケースも存在します。

 「どこまで原状回復する必要があるか」「業者の選択は可能か」等については、事前に貸主や管理会社と打ち合わせを行い、早めに見積もりを取っておくと安心でしょう。

【3】物件選定・契約時のチェックポイント

 条件を確認し、候補物件を絞り込んだら、不動産業者と交渉します。物件によっては初めの数カ月の賃料をフリーレントとしてサービスしてくれる場合もあります。

 現オフィスの原状回復期間として、1カ月程度をフリーレントにできると賃料の二重払い期間をなくせますので、交渉できそうであれば、相談してみましょう。

 また、オーナーとの契約前に、工事区分や消防設備工事の有無は必ず確認しましょう。

 工事区分には、オーナーの負担でオーナーの指定した業者が工事を行う「A工事」、テナントの費用負担でオーナーの指定した業者が施工する「B工事」、テナントの費用負担でテナント側の業者が施工する「C工事」という3つの区分が存在します。

 賃貸オフィスとして借りる室内スペースは、テナント側で自由に工事できると思われがちですが、工事区分はビルによって異なるうえ、区分によって費用負担や工事の内容も大きく変わります。そのため、希望する部分の工事が可能か、またどの区分に当たる工事となるのかは、事前にしっかりと確認してください。

手続きなどの漏れを防ぐためのチェックリスト

 オフィス移転時には、住所変更や関係省庁への届け出など、多数の手続きが発生します。スムーズに進めるためにも、次のチェックリストを活用しましょう。



(1)移転時の連絡先リスト

 移転に際して、得意先はもちろんのこと、図表1のような取引先にも住所変更の連絡をします。

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(2)社内書類・Webサイトなどの住所変更リスト

 社内には、旧住所や電話番号を使用したものがたくさんあります。移転後に慌てないよう準備しておきましょう(図表2)。

 また、会社のWebサイトには、移転の1〜2カ月前からオフィスの移転告知を掲載し、移転後は速やかに新住所・電話番号などの変更点を更新できるよう準備しておきます。

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(3)関係省庁などへの届け出リスト

 各関係省庁への提出書類について、主なものを挙げます(図表3)。チェックリストも確認しながら、漏れや遅延がないように気を付けましょう。

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・法務局(登記所)

 本店(本社)移転の場合は、株主総会(定款の変更が必要な場合)、もしくは、取締役会(取締役会を設置している場合)を開催し、議事録を作成のうえ、その他必要な資料とともに、本店移転の登記申請書を、管轄法務局に申請します。提出期限は移転日から2週間以内です。

 支店(支社)移転の場合は、支店移転の登記申請書を管轄法務局に、移転日から3週間以内に申請します。

 移転により管轄法務局が変わる場合、移転先の管轄法務局にも申請します。

・税務署

 「異動届出書」「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の手続きが必要です。移転前の管轄税務署で届け出を行います。「異動届出書」は移転後速やかに、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」は、移転日から1カ月以内に提出します。

・都道府県税事務所

 所定の届出書を都道府県税事務所に提出します。都道府県によって、届出書の様式や提出期限が異なりますので、各自治体のサイトなどで確認してください。

・市区町村役場

 所定の届出書を役場に提出します。市区町村によって、届出書の様式や提出期限が異なりますので、各市区町村のサイトなどで確認してください。

・日本年金機構

 「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を、移転日から5日以内に、電子申請・郵送・窓口持参いずれかの方法で、事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出します。これまでの年金事務所が管轄する地域外へと移転する場合は、「変更前」の所在地を管轄する年金事務所が提出先となりますので注意してください。

・労働基準監督署・公共職業安定 所(ハローワーク)

 事業所所在地の変更があった翌日から10日以内に、「労働保険名称、所在地等変更届」を、新事業所を管轄する労働基準監督署または公共職業安定所に提出します。

 その後、「労働保険名称、所在地等変更届」の控えおよび確認書類を添えて「雇用保険事業主事業所各種変更届」を、移転後の所在地を管轄する公共職業安定所に提出します。

・郵便局

 「転居届」を、移転前の所轄郵便局へ提出します。提出の際には、届出人と法人の関係性が証明できるような社員証や健康保険証が必要です。

 届出期間に定めはありませんが、郵便物がスムーズに届くよう、転居先が決まったら早めに提出しましょう。

・消防署

 収容人数や条件により、防火管理者の専任が必要な場合は、「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を新オフィスの所轄消防署に、移転後遅滞なく提出します。

・警察署

 社有車がある場合は「自動車保管場所証明申請書(車庫証明書)」を、新オフィスの所轄警察署に速やかに提出します。

著者紹介:松本 宰(まつもと・おさむ)

SUVACO株式会社/執行役員・編集長

オフィスのレイアウト・内装デザイン、ICTソリューションに至るまで、さまざまな経営課題を解決するオフィスづくりをサポートする「Offi-Suvaco」(オフィスバコ)を運営。


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