[ITmedia ビジネスオンライン] 広がる副業解禁、運用次第で離職加速?

3月 22, 2021
Category: お知らせ

産経新聞


 社員の副業を認める企業が相次いでいる。副業解禁の動きは大手企業を中心に業種を問わず拡大。企業は、社員が副業で得た経験や人脈の取り込みも狙っている。ただ、過重労働で社員が健康を損なったり、情報が外部へ漏洩(ろうえい)したりするリスクも大きい。副業制度の設計や運用のあり方が課題となりそうだ。(田村慶子)

社外からノウハウや知見

 「40歳は仕事やキャリアの幅が決まる節目。そんな時に新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務するようになり、一度、外の世界にも触れてみたいと思ったのが副業のきっかけです」

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 ダイドーグループホールディングス(GHD)経営戦略部でマネジャーを務める大谷優子さん(40)はこう語る。大谷さんは会社の副業制度を使って昨年12月から東京都港区のアプリ開発会社で仕事をスタート。経営戦略立案など管理系の業務経験を買われ、大阪市内の自宅からパソコンなどを使って、1日1〜2時間ほどリモートワークで副業を続けている。

 ダイドーがグループ在籍の社員約2300人を対象に副業制度を導入したのは昨年9月。現在、約40人の社員が副業で多様な仕事に就いている。

 同社は「柔軟な働き方を実現し、副業を通じて多様な価値観やスキル、知見を身につけてほしい」と説明。「従来の枠にとらわれない独創的な発想などを生み出すとともに、従業員自身のワーク・ライフ・シナジー(仕事と生活の相乗効果)を実現することにもつながる」と期待する。

 大谷さんは次のように指摘する。

 「初めは定められた上限の範囲内で多くの時間を副業に費やしたが、体力的にきつかったこともあり本業とのバランスを取るようになりました。収入アップの利点もあるが、仕事の進め方や企業文化の違いなど刺激は多い。外から見ることで自社の良さにも気づきました」

 ダイドーは並行して、他社からの副業人材の受け入れ制度も導入した。現時点で実績はないが、将来的には社外から異なるノウハウや知見の取り込みにつながるとみる。


産経新聞


「興味ある」が56%に

 ほかの企業では、みずほフィナンシャルグループやキリンHD、全日本空輸などが副業を解禁した。第一生命HDは4月から、営業職を除く約1万5千人の社員を対象に副業を認める。同社によると、社外での副業を認めるのは大手生命保険初。他社と雇用契約を結ぶのは禁じるが、勤務時間外に個人事業主などの形で働くのを認め、社外での経験を本業に生かしてもらうなどの相乗効果を狙う。

 コロナ下での在宅勤務や外出自粛をきっかけに、自らの働き方や仕事そのものを見つめ直す人は多い。在宅勤務などテレワークの急速な広がりで会社に行かなくてよくなり、副業しやすい環境も整った。副業を前向きに検討する人は増えている。

 オフィス用品通販業のカウネット(東京都港区)が昨年11月行ったアンケートによると、有職者1278人のうち、副業していないが「興味ある」と答えた人は56.2%に上った。

 既に副業をしている人は13.8%。副業にかける時間は1週間当たり平均7.6時間、収入は1カ月当たり同6万1134円だった。副業を始めた理由は「副収入を得るため」が56.3%と最多だが、「本業では得られない経験をしたい」30.7%、「スキルアップのため」22.2%などキャリア向上に向けた自己投資的な目的も多かった。


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マッチングサービスも

 副業解禁は新たなビジネスも生んでいる。文具大手コクヨは、テレワークや副業の需要をオフィス家具の購入につなげようと昨年から営業活動を強化。一般住宅でも使いやすい家具やインテリア用品を集めた個人向け通販サイトを昨年11月に開設した。商品を増やし現在は約4500点を展開。今年1月の販売点数は前月比約3倍だった。

 就職、転職などを支援しているリキャリア(大阪市西区)は副業情報サイト運営を通じ、副業を始めたい人と副業人材を求める企業などをマッチングするサービスを1月に始めた。大阪府下中心に約30件の情報を掲載。マッチングの実績はまだ1件だが、菅沼周平社長は「副業のニーズに応える仕組みが整うことで、企業はリモートワークで遠方から人材を集められる利点もある」とする。需要は地方にも広がるとみて、将来は運営サイトを通じ全国で求人募集したい考えだ。

本音では歓迎しない企業も

 ただ、副業は課題やデメリットも多い。企業は情報漏洩や社員の健康被害などリスクと向き合いながら、利点を最大限生かす制度の設計や運用が求められる。

 コロナ禍による業績悪化で従業員の年収が平均約3割減った全日空は、家庭教師など個人事業主の形に限って認めていた副業について、4月から他社との雇用契約を結ぶ形も可能にした。「選択肢が広がり収入減が補いやすくなる。社外での経験を本業にも生かしてほしい」(広報担当者)とする。

 ただ、客室乗務員は勤務シフトが変則的で他の仕事を入れづらく全社員が制度を有効に使えないジレンマもある。同社は「確実に取れる休日を設けるなど制度の改善も検討中」という。

 一方、リキャリアの菅沼社長は「人材を募りやすいからと副業を表向きは認めながら、実際に制度を利用した社員を辞めさせるケースもあると聞く」とし、本業以外に時間を割くことを本音では歓迎していない企業の存在を指摘する。

 菅沼社長は警告する。

 「制度の趣旨とかけ離れた不適切な運用は、逆に会社への不信感から離職につながるだろう」


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