[ITmedia Mobile] IIJmio「ギガプラン」の狙いを聞く 通信品質はどうなる? eSIMの音声サービスは?

3月 19, 2021
Category: お知らせ


 大手キャリアの値下げに対抗する形で導入されたIIJmioの「ギガプラン」は、その安さが衝撃を与えた。先行して新料金プランを導入していた他社を大きく下回り、MVNOとしての“意地”を見せた格好だ。料金は、データ量が最も少ない2GBプランで780円(税別、以下同)。現行プランのミニマムスタートプランと比べると、データ容量は1GB少なくなるが、料金は820円も下がる。

 eSIMをメインの料金プランの中に組み込んだのも、ギガプランの特徴だ。フルMVNOにいち早く参入し、eSIMの展開も早かったIIJだが、これまでは通常のSIMカードとは料金体系が別々だった。eSIMはデータ通信のみで、音声通話契約はできないが、料金はSIMカードを発行する場合のデータ通信専用プランよりさらに安く、2GBの価格はわずか400円。最大容量の20GBプランでも、1500円と激安価格を打ち出している。

IIJmio
音声SIMは月額780円からという低料金を実現したIIJmioの「ギガプラン」

 では、IIJはなぜここまで大胆な値下げに踏み切ることができたのか。同社でMVNO事業を統括する、執行役員 MVNO事業部長の矢吹重雄氏、MVNO事業部 コンシューマーサービス部長の亀井正浩氏、MVNO事業部 ビジネス開発部 担当部長の佐々木太志氏の3人に、ギガプラン導入の狙いを聞いた。

20GBを入れるかどうかは最後まで意見が割れた

IIJmio
執行役員 MVNO事業部長の矢吹重雄氏

―― ギガプランを導入した経緯を、改めて教えてください。

矢吹氏 もともと、料金を改定するという話はありました。eSIMをシェアしたいという意見が多く、それは1つのテーマでした。ただ、eSIMだけをシェアにするとなるとなかなか複雑なので、思い切って全料金をガラッと変える必要があると考え、結果的に変えることにしています。2020年の6月には、最終的な価格以外の部分まではできていました。

―― データ容量も、今のような区切りだったのでしょうか。

矢吹氏 当時は、ちょっと少なかったですね。ただ、それだと既存ユーザーの解約がどうしても出てきてしまいそうだったので、そこをどう減らすのかも1つのテーマとしてありました。試行錯誤しながらできたのが、あの料金です。特に20GBのところは、最後の最後まで意見が割れていました。

―― それは、MVNOだとあまり使われないからということでしょうか。

矢吹氏 はい。確かにそんなに必要なのか、という意見はありました。

―― ですが、最終的には料金プランの1つになっています。これはなぜでしょうか。

矢吹氏 (ahamoなどの登場で)市場のベンチマークになっていたのはありますが、どちらかと言うと、社内に2人だけ20GBを使っていた人がいたことが大きいですね(笑)。

―― その2人のためですか(笑)。

矢吹氏 自分たちが使いたいためのものという意味ではそうですね。

佐々木氏 (現行プランの)ファミリーシェアプランも僕が欲しかったから作ったようなものでしたから(笑)。

今までと違うものにすることは早い段階から決めていた

―― 発表会では、自分たちが使いたいプランという原点に立ち返って料金プランを作ったというお話がありましたが、20GB以外のデータ容量もそうでしょうか。

矢吹氏 統計的にIIJmioは3GBのミニマムスタートプランが多いというデータがあり、分布を見ると、2GBと4GBはいい線を突いていると思います。同じく、ライトスタートプランの6GBを考えると、4GBと8GBは悪くない選択肢としてあります。ここは仮説と検証を繰り返しました。

 例えば、4GBプランは、クーポンがどのぐらいで使い切られて、我慢している人がどれだけいるのかを考え、3GBでは足りないということで考えたものです。3GBのままでいいという話も当然ありましたが、既存プランを大幅にテコ入れするのが困難で、新プランを出すのであれば、3GB、6GB、12GBは混乱を招きます。今までとは違うものにするというのは、早い段階で決めていました。

亀井氏 同じデータ容量にして、何月何日以前と以降で分けてしまうと、絶対に伝わらない上に、誤解を与えてしまいます。申し込みの日を起点に同じプランでデータ容量を分けるのはやめた方がいいというご指摘をいただきました。

矢吹氏 販売店である家電量販店の意見も取り入れています。

IIJmio
ギガプランの料金。既存のプランとはデータ容量も大きく変えている

卸価格や接続料を予測して料金を設定した

IIJmio
MVNO事業部 コンシューマーサービス部長の亀井正浩氏

―― 金額ですが、こちらが予想していたよりもかなり安かった印象があります。特に音声通話対応の料金が非常にリーズナブルでした。

亀井氏 音声のユーザーにファーストスマホとして使っていただけるよう、分かりやすく魅力ある価格で訴求したいという思いがありました。逆に、データ専用やSMS対応SIMの料金は、後付けでこれぐらいという価格になっています。渉外チームがキャリアと話をしたり、MVNO委員会の一員として活動したりする中、総務省でこれだけの話がされていれば、これだけの価格(卸価格や接続料)になるという予測を出しました。

 それをしたことで、ここまで攻めていくことが明確になりました。2GBで780円は僕らも頑張った気はしていますが、2年、3年たてば、きっと(他社も)これに並んで落ち着くだろうというものを作っています。20GBの1880円は割と決めやすかったのですが、2GBは当然楽天モバイルの発表も踏まえています。4GBで(楽天モバイルの1GB超3GB以下の980円に)並び、2GBで下をくぐるようになっています。これは、1GB以下を無料にする発表の前から考えていました。

矢吹氏 音声プランについては、データ容量と価格を見ると、確かにちょっと下げすぎたかもしれませんが、品質という問題が1つ残ります。この3つの掛け算で言えば、品質とデータ容量、価格の3つは十分適正だと思っています。


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eSIMだけ安いのはなぜ?

―― 接続料の金額は同じだと思いますが、eSIMだけ価格設定が通常の料金より安くなっています。これはなぜでしょうか。

亀井氏 サブ回線でちゃんと使っていただくためには、訴求しやすい価格である必要がありました。eSIMのよさを分かっていただき、そこからシェアで他の回線もMNPで入っていただけるのであれば、“見せ球”としてアリありということであの価格になっています。

―― つまり、宣伝のため、意図的に安くしているということですね。

亀井氏 そうなります。

―― ちなみに、先ほどお話に出てきた楽天モバイルを主回線にすると、合計3GBが400円で使えて、通話もRakuten Linkならかけ放題になってしまいます。これは狙ったのでしょうか(笑)。

亀井氏 それでeSIMが広がってくれれば助かりますが、計画していたかと言われれば、全然そんなことはありません。

矢吹氏 われわれとしては、1回線目もIIJmioにしていただきたいので、そういう戦略は考えていませんでした。

接続料の予測は立てやすくなっている

IIJmio
MVNO事業部 ビジネス開発部 担当部長の佐々木太志氏

―― 音声プランに関しては値下げ幅が大きいと思いますが、こちらの背景を伺えますか。やはり基本料が大きかったのでしょうか。

佐々木氏 今、この瞬間は666円ですが、ここをいかに下げていくかになります。最終的に、プレフィックス(の自動付与機能による音声接続)に行くかどうかですが、行かないのであれば、卸価格をどう下げていくのか。これは、われわれ側でも早急にコスト低減を考えていかなければなりません。ただし、有識者会議での結論はほぼ出ていますし、(音声接続の)約款も出ています。

―― 過去には、接続料の見込みが外れて業績を下方修正したこともありますが、今回は、その心配はないのでしょうか。

佐々木氏 接続会計の読み方は、トラフィックの需要をどう考えたらいいのかになりますが、以前はMNOから出てきた数字が上がるか、下がるかを予測し、事後でチェックをしていたところがあります。先の下方修正以来、情報収集能力や分析能力はかなり高まっていますし、MNOからも将来原価方式で予測をもらえるようになりました。総務省の指導が出たことで、MNOにもプレッシャーがかかっています。僕ら自身のスキルもありますし、社会情勢も変わっている。下方修正したときより、予測は立てやすくなっています。

矢吹氏 アクション・プランで期間を区切ってここまで下げるという話が、1つのリスクヘッジになっています。3年後にそうなると考えると、(仮に外れても)今年(2021年)か来年(2022年)かだけの話で、リスクマネジメントはしやすい。従来以上に精度が上がっていることに加えて、こういった事情もあります。

通信品質を下げるような設計にはしていない

―― なるほど。先ほど矢吹さんは品質面のお話をされていましたが、データ容量が増えるとなると、それに応じてトラフィックも増えていくと思います。混雑時の通信速度は、どうなっていくのでしょうか。

矢吹氏 基本的には、今までより改善したいということで設計しています。どこまで改善できるのかはこれからですが、下がるような設計にはなっていません。上げていくのはわれわれの努力です。現時点で最終的な音声卸の料金や接続料が確定していないので、言いにくいのですが、品質改善を目指すべく設計していますし、それを目指す運営もしています。

佐々木氏 足元を見ると、コロナ禍でトラフィックは平滑化してきています。ご自宅でテレワークをしている方が昼休みに使わなくなっただけでなく、以前は夕方6時から8時がストレスフルでしたが、通勤、通学時のトラフィックも激減しています。もちろん、僕らの取り組みの効果も一定程度はあり、昔に比べるとひどい状況にはなっていません。コロナの影響は一過性の話かもしれないので、来年(2022年)、再来年(2023年)にどうするかという話はありますが、逆に、アクション・プランでドラスチックに接続料が下がる可能性もあります。トラフィックに関しては若干の追い風もあり、接続料は下がっていくので、われわれとしては料金の値下げだけでなく、きちんと体感の向上につなげていきたいと思います。


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接続料を全て透明化するのは難しい?

―― もともと、かかったコストをトラフィックで割るという前提で出していた接続料ですが、こんなにあっさり変わってしまうと、算定式とは何だったのかと思ってしまいます。

佐々木氏 確かに接続会計は公開されていて、昔に比べるとデータもそろっていますが、それをつなげる計算式が外部には分かりません。どうつなげるとああいった数字になるのかという計算式は、どこにもないんですね。それが分からないと、こちらで検算しようがありません。ただしわれわれも、各項目を見ながら、何となくどこが大きく効いてくるのかは分かるようになりました。徒手空拳ではなく、何となくではありますが、根拠持って言えるようにはなっています。

―― その辺の数字をもっと公開してほしいという要望はないのでしょうか。

佐々木氏 二種(第二種通信事業者)には言いづらいところがあります。一種(第一種通信事業者)は独占企業なので、全てをガラス張りにしなければなりませんが、二種は独占ではなく、ドコモ、KDDI、ソフトバンクはどんぐりの背比べのようなところにまで近づいています。会計を全て透明化しろとなると、競争が成り立たなくなってしまうおそれがあり、そこに抵抗感があるのは分かります。

 とはいえ、全てをカーテンの裏に隠して、数字を自由にこねくり回していいわけではありません。MVNO委員会でも、カメラをこっそり忍ばせるように有識者が見て、怪しいことをしていないのかをサーティファイする仕組みを入れたらいいのでは、というようなことは言ってきています。今は、有識者の先生にも見られる制度にはなっていないので、任意のお願いで「いやだ」となってしまうと全てが分からなくなってしまいます。

 イコールフッティングで、可能な限りMNOと同じことストMNOの設備を使えるようにしてほしいということはお願いしているところです。内部の基準にメスを入れるのも、選択肢の1つには入ってきます。

eSIMの音声サービスはマーケットが広がってから

―― eSIMに関しては、音声プランがありませんが、MNOが卸で提供すればやりたいというお話をしていました。IIJはフルMVNOに先行投資をしている中、あえて卸を利用したいというのはなぜでしょうか。自身でやられるという選択肢はないのでしょうか。

矢吹氏 eSIMに関しては、あまりにもマーケットが小さいのが最大の問題です。一生懸命やっていますが、IIJも今、やっと4万契約ぐらいです。iPhoneは使えますが、対応デバイスもまだまだ少ない。メリットが増えるには、本質的に、事業者が増えた方がいいと考えています。マーケットを広げる中で、いろいろな事業者が参入して、スイッチングできるシーンが増えなければ、プラスチックのSIMカードより若干安いもので終わってしまいます。まずは、そこが出来上がっていく必要があります。

 IIJ自身がフルMVNOで音声をやるかというと、今のところネガティブです。マーケットが小さすぎるからで、投資回収の意味で見合いません。爆発的にマーケットが広がれば、投資に見合う回収ができ、可能性も出てきますが、その前に5G SAをどうするのかという話があります。そうすると、いつやるのかという話になってしまいます。

佐々木氏 今までは緊急通報などがあり、音声通話は回線交換というレガシーに相当守られてきているところがあります。ただ、2025年に回線交換が撤廃され、オールIP化していくと、直後はビジネスモデルが大きく変わることはありませんが、(回線交換を)守る理由もなくなってきます。また、設備として伝送網をIPにすると、さまざまなものとの融合ができます。例えば、110番もアプリで警察に場所が通知されて、助けを求めるようなことができるかもしれない。

 そういう世の中が来たときに、レガシーに固執する必要はないと思います。IPの世界で全部ができているときに、音声設備を持つ意味がどこまであるのか。音声通話自体がLINEやFaceTimeのようなものになっていくのかもしれません。2025年を境にインフラが変わっていくので、今の段階で音声のフルMVNOを自前でやるのはかなり難しいと思います。


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5Gを「無料オプション」とした理由は?

―― MVNO各社が新料金プランを出す中、5G対応は会社によって方向性がまちまちです。IIJは、無料のオプションとして対応しましたが、これはなぜでしょうか。

亀井氏 私たちで出しているAndroid端末にも、5G対応のものが増えています。せっかくご購入いただいたのに、ピクトに5Gが出ないのもどうなのかと考えました。設備の都合上、われわれからは4Gか5Gかの区別ができないため、(通信速度に)差をつけるのは難しいのですが、出すのであればドコモとauは同タイミングでと思い、6月から対応していきます。

佐々木氏 オプションにしたのは、5GのSIMカードだと3Gが使えなくなってしまうからです。つまり、オプションにせず、全てを5GのSIMカードにしてしまうと、4Gの端末に挿したときにデメリットしかなくなってしまうということです。また、端末によっては5Gのオプションをつけていると、動作しないケースもあります。ドコモ側で5Gに接続するための機能を落とせば、3Gと4Gでつながるようになるので、5G非対応の端末なら、オフにした方がいいということになります。

IIJmio
6月から提供予定の5Gオプションは無料で利用できる

―― なるほど。5Gオプションというより、4Gを間に挟んで3Gを取るか、5Gを取るかの選択になるということですね。ちなみに、5Gを取ったとして、速度は十分出るのでしょうか。

佐々木氏 P-GW(MNO網と接続するための終端装置)のチューニングにもよりますが、空いている時間帯であれば、5Gオプションをオンにした方がスピードが出る場所は多いですね。1Gbps出るかといわれると難しいかもしれませんが。ただ、今の段階では積極的に訴求しているというわけではなく、せっかく端末に載った5Gがつぶされてしまうのはもったいないというところからスタートしています。まずは、5Gの世界を垣間見てくださいというのが、6月時点での訴求になります。

―― SMS付きやフルMVNOで5Gオプションが使えないのはなぜでしょうか。

亀井氏 開放されている仕様では、SMSプランでの5G対応ができないからです。eSIMについては、フルMVNOが5G対応していないからというのが理由になります。

キャンペーンも継続する

―― ギガプランで大幅な値下げをしましたが、今後は6カ月や1年に限定した期間限定のキャンペーンは減っていくのでしょうか。

亀井氏 定価で勝負しましょうというのは大前提ですが、キャンペーンをやらないわけではありません。

矢吹氏 現実的にはやると思います。できれば、キャンペーンは他社もやめてほしいと思っていますが(笑)。キャンペーン合戦になってしまうと、結局は巨大資本を持っているところが勝ってしまいますからね。

―― 新プランで、加入者の獲得目標はありますか。

矢吹氏 上からも求められていますが(笑)、これだけマーケットが動いている中で数値を作ると、変な方向に行ってしまいかねないので、まずは値下げをして出すところに集中しています。それを大きくしていく中で、改めて考えていきます。

取材を終えて:通信品質をどこまで向上させられるか

 IIJmioのギガプランは、料金プランの全面的な刷新を意図していたものだ。もともとは2020年夏ごろに投入しようとしていたものだが、システム開発が遅れ、2021年6月ごろに新料金プランを投入する予定だった。これを4月に巻き上げたのは、ahamo開始以降、急速に競争環境が変わってしまったためだ。矢吹氏らの発言を見る限り、金額自体も当初の想定から変わり、より安価な料金になっていることがうかがえる。

 MVNO同士の競争も激化しているが、ギガプランはそれを一歩リードする価格設定でインパクトを出すことに成功した印象を受ける。ただし、いくら安くても通信が安定していなければ、安かろう悪かろうになってしまう。インタビューでは、通信品質も向上させていくという話も出ていたが、4月1日以降、トラフィックのパターンは大きく変わる可能性もある。ここにどう対応していくのか、今後の評判を左右しそうだ。


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